テスラFSDは本当に日本に来るのか。2026年、規制の山場を1次情報で追いかけた
Model Yが我が家に来てから、ずっと気にしている機能があります。
FSD(Full Self-Driving)です。日本ではまだ使えません。
いつ使えるようになるのかは「規制次第」で、その「規制次第」の中身が2026年の春から初夏にかけて、立て続けに動きました。
オランダでの欧州初承認、国連での世界初のルール採択。
FSD解禁を待つオーナーにとっての山場が、数か月のあいだに次々通過していった印象です。
結論から書きます。
FSDが日本で走るために本当に足りていないのは、国際的なルールではなくて、日本の国内手続きのほうです。
しかもその国際ルール作りでは、日本がずっと主導側にいた。それなのに、自分の車でFSDを動かせる日はまだ見えていません。
ここに、けっこう複雑な気持ちがあります。
【Knack】規制の山場で何が起きたか
オランダRDWの欧州初承認(4月10日)
最初の大きな動きは、4月10日にオランダの車両認証当局RDWがFSD Supervisedを正式承認したことです。
FSD Supervisedが欧州で型式認証を取ったのは、これが初めて。
18か月、160万kmを超える実路試験と、4,500回の専用コース試験を経ての承認でした。
法的な経路は、UN R-171(DCASという運転支援の枠組み)と、第39条の例外規定の組み合わせ。
これはオランダ国内に暫定有効な型式認証で、EU全域への拡大には欧州委員会への申請と加盟国の投票が別途必要になります。テスラはEU全域承認を2026年夏に見込んでいますが、これはあくまでテスラ側の予測です。
実際、スウェーデンやフィンランドなど北欧の当局は、速度超過を許す挙動や凍結路での扱いに疑問を出していて、夏の委員会で通る保証はまだありません。
気をつけたいのは、RDWの承認はあくまでレベル2の運転支援に対するものだという点です。
RDW自身が声明で、FSD Supervisedは自動運転ではなくドライバーが常に責任を持つ運転支援だ、と念を押しています。
テスラは「他のどの車にもできない」と表現しましたが、ハンズオフの高速道路支援ならBMWが、BlueCruiseならFordが、すでに欧州で似た承認を持っています。
テスラだけの特権ではない。ここは割り引いて読む必要があります。
それでも、型式認証という仕組みを持つ欧州を初めて通過した実績は、日本にとって参考材料になります。
法的拘束力が日本に及ぶわけではないし、その欧州でも承認は今まさに揉めている最中ですが、前例がまったくない状態よりは、国交省も判断しやすいはずです。
国連WP.29のADS規則採択(6月24日)
二つ目の大きなニュースが、6月24日です。
国連のWP.29が、完全自動運転(ADS)に関する世界初の国際規則を採択しました。
UNECEは「世界初のドライバーレス車両規則」と発表しています。
ただ、ここは混同しやすいので腑分けします。
6月24日の目玉になったADS規則は、ドライバーがいない完全自動運転を対象にした枠組みです。
今のFSD Supervisedはレベル2、つまりドライバーが常に監視する運転支援なので、このADS規則そのものがFSDに直接効くわけではありません。
じゃあFSDはどの枠組みなのかというと、オランダが承認に使ったUN R-171(DCAS)のほうです。
レベル2の運転支援を対象にした、ADSとは別系統のルール。
「世界初の自動運転ルール」という派手な見出しは完全自動運転の話で、自分たちオーナーが乗っているFSD Supervisedの土俵とは、そもそも別なんですよね。
だから6月24日の採択は、自動運転の歴史としては大きくても、日本でFSDが解禁されるスイッチそのものではありません。
ここを取り違えると、解禁が近いと早合点します。
この国際規則は、メーカーに対して、車を出す前に車両の安全性と社内の体制を当局へ説明して認可を受け、売ったあとも継続して不具合を監視・改善することを求めます。
中心にあるのは、日本が提唱した「有能で注意深い人間のドライバーと同等以上の安全性」という考え方。日本はこのルール作りを、WP.29副議長として主導してきました。
日本側の動き:認定制度と保安基準適合は別の話
日本側でも、春から制度の話が進みました。国交省が「レベル2++(プラスプラス)」の優良車認定制度を作る方針を示しています。
レベル2++は、ドライバーの関与がほぼ要らない水準の高度な運転支援を指す国交省の区分で、高速道路だけでなく複雑な一般道でも高精度に走れる支援が念頭にあります。
FSDや、日産の次世代プロパイロットがこの領域です。
ここで二つの制度を分けて考えないと、ぬか喜びします。
一つは、この優良車認定制度。
国が「この技術は優良ですよ」とお墨付きを与える、任意かつ推奨の仕組みです。補助金のような優遇を付けるかどうかは、まだ決まっていません。
もう一つが、保安基準適合。
これは公道で合法的に使えるかどうかを判断する必須の関門で、FSDのローンチに直結するのはこちらのほうです。認定制度ができても、保安基準に適合しなければ公道では走れません。ここを混同すると、解禁時期を読み違えます。
しかも、認定制度の設計の軸になっているのは、テスラではなく日産です。
日産は英ウェイブのAIを積んだ次世代プロパイロットを2027年度に市販する予定で、国交省はこれを「レベル2++に相当」と定義しています。
報道を読む限り、制度設計の話にテスラの名前は直接出てきません。
制度はできても、テスラが後回しにされる可能性は残ります。ここは楽観しすぎないようにしています。
国は認定制度を「2026年中」に作ることを目指しています。
6月に中間とりまとめ案が出て、次の本部会合は12月の予定。仮に補助金のような優遇が付くとしても、狙いは国産L2++車の新車普及を後押しすることなので、既存のテスラにOTAでFSDを足す使い方が対象になるとは考えにくい。
ここは制度の中身が出てみないと分かりませんが、あまり期待はしていません。
橋本社長の「年内ローンチ」はどこまで本気か
テスラジャパンの橋本社長は、3月末に公開されたインタビューで「年内にローンチしたいというところで動いている」と話しています。
ただ、本人もすぐ条件を付けていて、あくまで希望であること、政府の規制は一切コントロールできないのでそこが延びればローンチも遅れること、をはっきり言っています。
日本固有の課題も具体的に挙げていました。
信号のない横断歩道の手前に歩行者がいる場面で、日本の法規だと車は停まらなければいけない。
でもFSDが「横断歩道に人はいない」と判断して進んでしまうケースがあり得る。
こういう日本のルールに合わせた再教育が要る、と。
逆に言えば、課題はもう具体的に見えていて、認可さえ下りれば長くはかからない、というのが社長の感触のようです。
ここも割り引いて読んでいます。
マスク氏の「年内」「来年」が何度も延びてきたのは、オーナーなら誰でも知っている話です。
社長の発言は、希望と前提条件を丁寧に切り分けて読むのが安全だと思っています。
結局、いつ来るのか
今ある材料で、自分なりに三つのシナリオに整理しました。
楽観は、2026年内から年明け。
欧州承認の資料がそのまま効いて、国交省の保安基準適合判断が想定より早く進む場合です。橋本社長の「年内」が、ぎりぎり射程に入ります。
本命は、2027年前半。
国際規則の国内取り込み(道路交通法・道路運送車両法の改正)と保安基準の整備に、それなりの時間がかかる前提です。個人的には、ここが一番ありそうだと見ています。
慎重に見るなら、2027年度後半。
制度設計の軸になっている日産の2027年度市販化に歩調を合わせられ、テスラがその後ろに回される場合です。
FSDを日本で止めているのは、国際ルールが無いことではありません。
オランダが承認に使ったDCASの枠組みはあるし、国際基準もこの春からの一連の動きで形が見えてきた。
残っているのは国交省の国内取り込みと保安基準適合判断のスピードで、ここから先は、技術の話というより役所の手続きの話になります。
オーナーとして、今やるべきこと
待っているあいだに、お金の判断を一つ迫られています。FSDの買い切りです。
テスラジャパンは、FSDの買い切り(一括購入)の受付を2026年6月30日で終了します。
日本の注文画面に、買い切り購入は2026年6月30日まで、と明記されています。
今の買い切り価格は871,000円。エンハンスト・オートパイロットの機能も含む「フルセルフドライビング ケイパビリティ」というオプションです。
はっきりしているのは、ここまでです。
米国は2月にサブスク一本化へ移っていて、日本も同じ流れに乗ると見るのが自然ですが、日本でサブスクをいつ始めるのか、月額がいくらになるのかは、まだ何も発表されていません。
そもそもFSD自体が未解禁なので、7月からすぐサブスクが使えるという話でもない。分かっているのは買い切りの締め切りだけ、という状態です。
冷静になりたいのは、日本ではFSD固有の機能がまだ使えないという事実です。
正確に言うと、買い切りに含まれるEAP(エンハンスト・オートパイロット)の部分、オートレーンチェンジやオートパークなどは今でも使えます。
眠るのは、市街地を走る本体のFSD部分だけ。とはいえ、その本体を目当てに買うなら、解禁までその一番高い部分は動かないわけです。
我が家のModel YはHW4なので、解禁後にOTAでサブスクを有効化すればすぐ使えるはず。
だとすれば、FSD目当てで今このタイミングに買い切る理由は薄い。
自分の結論は、FSD目当ての買い切りには動かない、です。
解禁されてからサブスクで試して、自分の使い方に合うか確かめてから決める。
地方の道で本当に使えるのかを、自分の目で見てから判断したい。
買い切りのほうが長く乗れば割安になる計算は成り立つけれど、肝心のFSD部分がいつ動くか分からない段階で一番高い買い方に踏み込むのは、自分の投資の考え方とも合いません。ここは無理をしない。
【Color】規格を作る側の国で、田舎の夜道を思う
地方に住んでいると、FSDの話は他人事ではありません。
地方は車社会で、しかも運転する人がだんだん高齢になっていく。
歩道と車道がきちんと分かれていない細い道も多い。
夜、街灯の少ない農道を走っていると、自分の運転だっていつまで安全にできるのか、ふと不安になる瞬間があります。
FSDのような技術の恩恵が一番大きいのは、たぶん都心ではなくて、こういう場所です。
正直に書くと、自分はかなりの「FSDはよ!」勢です。
RDWの承認が出た4月10日は、朝起きてすぐニュースを確認しました。
6月24日のWP.29採択も、見出しを二度読みしました。
冷静に分析する記事を書いておきながら、内心はずっとそわそわしている。これは隠さずに書いておきます。
このそわそわの裏で、ひとつ引っかかっていることがあります。
日本は、自動運転の国際ルール作りでは完全に主導側だということです。
WP.29の副議長は国交省の職員が務めているし、「有能で注意深い人間のドライバーと同等以上」という今回の国際規則の核も、日本が提唱したもの。
ルールを作るほうでは、日本は世界の先頭にいます。
それなのに、そのルールを自分の国の道で動かすとなると、いちばん後ろのほうにいる。
規格を作るのは先頭、その規格で走り出すのは最後。この対比が、どうにも据わりが悪いのです。
結局、待つ側にできるのは、注文画面とにらめっこすることでも87万円を払うことでもなくて、規制がどこまで進んだかを正確に把握しておくことくらいなんですよね。
解禁が近いという話になるほど、裏の取れない情報も出回ります。そういうものに乗って期待を膨らませず、一次情報だけを地味に拾い続ける。
たぶん本命は2027年前半。
それまでは、今の自分の手で運転します。いつかその一部を、もう少しだけ車に預けられる日が来るのを、楽しみにしながら。
【添え書き】
テスラ(Model 3 / Model Y)の購入を検討されている方に向けて、情報共有です。
Knack Colorのエネルギー報告では、テスラ Model Yを含めた太陽光+蓄電池の運用データを毎月公開しています。
テスラには「ご紹介プログラム」という制度があり、オーナーが発行する紹介リンクから新車(Model 3 / Model Y)をご注文いただくと、購入者側にも特典が適用されます。(私にも特典が入ります)
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